2009年9月25日金曜日

裏と表、西と東

 長い連休を利用して、裏銀座・表銀座縦走をしてみた。1日目:ブナ立尾根から烏帽子岳小屋、2日目:野口五郎、水晶、鷲羽、三俣山荘、3日目:西鎌尾根から槍ヶ岳山荘、4日目:東鎌尾根、喜作新道、燕山荘、5日目:合戦尾根を中房温泉に下山。最終日に曇った以外は、展望に恵まれた尾根歩きを楽しむことができた(混雑も)。ブナ立尾根は北アルプス三大急登の一つと言われているのでどんなに大変かと思ったが、涼しい天候が幸いしてか、あまり急と思わないうちに上がってしまった。むしろ木々や岩の配置が枯山水か公園のようだなという感想。
烏帽子小屋に着いてから、烏帽子岳往復をした。前烏帽子に登ると烏帽子岳と、その背後に立山が見えて思わず歓声。岩の感触を楽しんで烏帽子岳に登った後、烏帽子田圃の池塘群を楽しみながら南沢岳まで行った。ここからの烏帽子岳(写真)が一番格好がいいと思う。まさに烏帽子の形をしているので、横から見るとトサカ(あるいは野鳥のヤツガシラの冠羽)のようで頭でっかちで間が抜けて見える。近くで見るとなかなかカッコイイのだが、遠くからだと周りの山より低くてぱっとしない。そのおかげで百名山にならずに済んで、静かな山が楽しめるので善し悪しだが。

 今回、裏銀座縦走を思い立ったのは、GWに立山の稜線からこのあたりの山々を見たときに、特に野口五郎岳の西側の小さなカールが目について、そういえばまだ行ったことのない山域だなぁと思ったことがきっかけだった。この写真は、ちょうどその逆で、稜線から見下ろすカールの向こうに立山が見えているところ。立山というのは、ずいぶん大きな岩のかたまりを頭上に頂く山なのだなぁと改めて思った。水晶小屋もこぎれいな小屋に建て変わって魅力的だったが、後の日程の都合で、がんばって鷲羽を越えて三俣山荘まで歩く。双六小屋の混雑を嫌った人たちが遅くまでかかって歩いてきて、意外に人が多くなった。
 双六岳は山腹をトラバースして、西鎌尾根をたどる。三俣山荘で読んだ本によると、一番初めは三俣山荘の場所に行くためには、上高地、槍沢、西鎌を辿ったとのこと。古い歴史があるだけに、無理のない落ち着いたライン取りの道だ。千丈沢乗越までアップダウンを繰り返して行くがなかなか着かない。乗越からは坦坦と登るだけだ。自転車の山岳レースを連想しながら、ジワジワ登る。少し傾斜がゆるんだからと言ってトットッとペースをあげたり、大きな段差をエイと乗り越えてしまうと、ペースが乱れて結局遅くなる。ジワジワが大事。
 12時過ぎに山荘にチェックインして、幅50cmぐらいの寝床を確保する。この小屋は先着必勝主義で、後から沢山来たからと行って、そのスペースが侵されることがないので、その後ドンドン人が詰めかけて来ても安心である。結局夕方暗くなるまでチェックインの行列が続いた。槍の穂先への渋滞もご覧の通りで、行列が一番長かった3時半頃にはコルまで行列のしっぽが伸びていた。初めてでもないので今回はパス。
 時間があるので、南となりの大喰岳までブラブラ歩く。写真はここから南を見たところ。乗鞍岳の向こうに御岳が富士山のような頭をのぞかせている。この夜は、10時頃まで夕食が続き、その後食堂を片付けたところに寝る人たちは、ずっと廊下や玄関ホールで難民状態でゴロゴロせざるを得ず、落ち着かない雰囲気。小屋全体がザワザワしていてなかなか寝付かれず、やっと12時20分に消灯したと思ったら、もう2時半には点灯。小屋のスタッフはほとんど寝ていなかっただろう。朝食も混雑が予想されるので弁当にしてもらったが、鳥おこわのおいしい弁当だった。
 東鎌尾根は西鎌に比べると、全体にけわしい印象だった。やはり新しく開いた道のせいだろうか。水俣乗越付近のくずれやすそうな石灰岩ぽい一帯は濡れるとずいぶん滑りやすそうだ。ヒュッテ西岳で大休止。飲み物が冷蔵庫で冷やしてあるのが面白い。大天井ヒュッテまで来るといいかげん疲れたので、山頂はパスして喜作新道のトラバースを選ぶ。なかなか危うい道だが、眺めは素晴らしい。なんとか燕山荘までたどり着くが、ここは民主主義で混み合ったら詰めると脅かされるが、結局幅60cmぐらいの封筒シュラフでゆったり寝られた。清潔なシーツとマクラカバーが付いていて大変快適。さすがは北アルプス入門の山小屋だ。沢からくみ上げた水が自由に使えるのも有り難かった。写真は絵に描いたような燕岳と、左に小さく尖っているのが烏帽子岳、その間に立山と一ノ越。ぐるっと回った旅の終わりを象徴するようなシーンだ。


 今回は、登山期間中、豊科駅近くの南安タクシーに車を預けておいた。そこから登山口までと、下山してから豊科までここのタクシーを使うと、タダで預かってもらえるので安心だった。回送などもあるので、今後も便利に使えそうだ。

Camera: Panasonic DMC-FX01

2009年9月11日金曜日

濁河温泉から御嶽

 御嶽の北西にある濁河温泉からの登山道が静かで良いとムースの石田さんに聞いて登ってみた。前夜は濁河温泉ロッジ泊。昨年リニューアルしたとのことできれいそうだったから。このあたりは夏は陸上競技の高所トレーニングをする人が多く、この宿も日本ケミコンの女子陸上一行が滞在して朝早くから暗くなるまでトレーニングしていた。温泉は鉄分とケイ酸の多い感じで入りやすい。露天風呂に温度の違う浴槽が複数ありハシゴして楽しんだ。翌朝6時過ぎに歩き始める。下の方は木道になっているところが多く、さすがは木の国飛騨。上の方に行くと石の階段になっていて、あまり地面に足をつけるところがない。図は、「ジョーズ岩」という露岩帯。静かな樹林の中の道が続く。稜線が近づくと人の声があちこちから聞こえ始める。山小屋泊らしい人たちが沢山いて雰囲気が変わる。稜線に出たところが五の池小屋。
 まず、継子岳を一周。コマクサがかろうじて咲き残っていた。ピークの手前では図のような薄い岩片が沢山たててある。信仰の所産か。しかしここを過ぎると火山岩地帯となり溶岩の固まった丸っこい岩ばかりとなる。変化が面白い。帰ってきて見た今月のヤマケイは信仰の山特集で、この継子岳の光景が紹介されていた。春にスキーでチャオやマイアから上がってきた時のことを振り返って楽しむ。乗鞍の向こうに雲に囲まれた槍ヶ岳や立山が見えたが、この後雲がだんだん増えて遠望が効かなくなった。高山一帯は雲のフタをしたよう。
 四の池あたりは雄大な旧火口のようすがいつ見ても良い。斜面を横切る露岩帯も面白い。図は三の池と摩利支天山。摩利支天にも何本も露岩帯が走っているのに初めて気がついた。摩利支天の三角点まで行ってから五の池小屋に戻ってコーヒーを頼む。一杯500円だがじっくりとドリップした濃厚なコーヒーがうまい。次回は、開田口から登ってこの小屋に泊まってみようか。登ってきた道を駆け下りて2時過ぎに帰着。宿で温泉に入れてもらってスッキリする。来たときは開田、チャオ経由だったが試しに飛騨小坂方面に降りてみる。山道を延々と下る道だったが景色は良い。飛騨側からの御岳が珍しかった。41号を美濃加茂まで行って東海環状道に乗って帰ったが、中央道がだいぶ渋滞していたようで、結果的には早かったようだ。このところ毎週末1000円渋滞がひどく、紅葉の時期が思いやられる。無料化の前段階として毎日1000円にしてくれると少しは分散するのだが。

Camera: Ricoh GRD2

2009年9月2日水曜日

五竜・鹿島槍

 今までなかなかタイミングがあわず、歩いたことがなかった後立山の五竜岳、鹿島槍ヶ岳を縦走した。近い場所の記録としては、13年前に当時発売したてのデジタルカメラ、リコー DC-2Lを持って扇沢と鹿島槍南峰を往復したぐらいだ。初日は遠見尾根から五竜山荘まで。雲が去来する中の登りだったが、ときどき日が照ると暑い。2,3日前までは北の高気圧からの寒気で相当冷え込んだとの情報で、暖かめの衣類を多くもってきたので大変。遠見尾根は周りの展望も良く楽しく歩ける(雲のかかる五竜岳)。白岳の下の斜面は小さなカールなのだろう。スキーには良さそうだ。
 予報通り、前線の通過と、南から接近する台風が湿った空気を送り込んでくるので、雨の朝となる。鹿島槍への稜線は名にし負うきびしい岩稜歩きなので若干迷ったが、天候の回復を期待して雨の中を歩き出す。あまり予習しなかったので、どのあたりが岩場なのか良くわかっていなかったが、要するにほとんどずっと岩場だった。すれ違う人もほとんどなく静かな中を、次々と現れるタスクを坦坦とこなしていく感じ。最近は、MontrailのHurricane Ridgeを愛用しているが、まさにこういう時のためにある靴だと思った。強力な靴底のフリクション(強力すぎてときどきけつまずくほど)、細かいホールドにも乗れるエッジ感覚、完璧な防水性。現行商品ではなくなってしまったのが残念だ。八峰キレットでは地形のすごさに驚く。鹿島槍南峰のくだりで漸く景色が少し見え始める(写真)。
 冷池山荘は、扇沢から上がってきた人たちで大賑わいだったが、それでも天気のわるさで人数としては少なめだったようで、ゆったり寝られた。文句の多い中高年が押し寄せても大丈夫なように理論武装がなされた小屋。いちいちもっともなのだが、ちょっと細かい。翌朝晴れればもう一度鹿島槍に登って展望を、と思っていたが、雲の多い天候に爺ヶ岳を冷やかして赤岩尾根をくだることにする。扇沢への道は混雑していそうなのと、テレキャビンの駅にタクシーで戻るには大谷原からが近いため。(文字通り赤い岩でできた赤岩尾根)
 赤岩尾根をおりはじめるとまもなくガスに包まれてというか雨雲の中に突入し、ハシゴがたくさんかかった急坂を坦坦と下りる。登ってくる人は2パーティー3名、同方向は他にいない。たいへん空いている。写真のような、ハンモックやドームのような形をした蜘蛛の巣が大変多い。細かい水滴がつくせいで、はっきりと見えるのだろう。クモの姿が全く見えないのが少し不思議。夜行性なのか。
 おりついた西俣出合では、北俣本谷にかけられた巨大な堰堤の下を通り抜けるトンネルがあった。おもしろい構造だ。堰堤を流れ落ちる水を裏からのぞける窓がいくつか作ってあるのもおもしろかった。法面の補強工事をいくつか見上げながら大谷原まで歩き、予約しておいたタクシーでテレキャビン駅まで戻る。6000円也。

Camera: Panasonic DMC-FX01