2011年1月31日月曜日

TLT始めました(テレマーカーによるインプレッション)

 かつて、テレマークスキーは軽快なスキーと言われたこともあったが、今では板はどんどん幅広化し、靴は高く硬くなり続け、スキーの機動力を活かして長距離を駆け抜けるツアーに適した道具を探すのに苦労する始末である。特に、このところ愛用してきた靴のScarpa T3が廃版になったのは残念だった。T3という製品自体、サーモインナーの収まり具合がイマイチで、完成度の高い商品ではなかったが、これをブラッシュアップする道は選ばれず、ラインナップにはT2とT4の間に大きなギャップが出来てしまった。これに対して山スキーの世界では、山岳レースの流行に後押しされて軽量化の波が押し寄せている。この先、この流れが変わらないならば、山スキー道具、特にTLTビンディングを使ったセットを試してみるのも良かろうと、シーズン初めにオーダーしておいたブツが揃って、今回試用してみた。GWの剱岳でTLT組と同行して、その登高スピードに驚かされたせいもある(体力的にもフツーではない人たちなので、なまじ道具を近づけると、かえって体力差を際立たせる恐れもあるが)。
 靴はScarpa F3。テレマークでなじみのあるジャバラを備えて、足裏が自然に曲がる。より軽量のF1もあるが、前傾固定をしないで滑ることの多い自分の使い方にはこちらの方が良さそう。テレで言えば、T2とT3の間ぐらいの雰囲気(T2 ecoのシェルとの比較)。ビンディングは、最軽量のロングセラーモデルDynafit Speed。左右ペアで670gというのはすごい。軽い軽いと愛用しているテレマークのG3 Targa T/9でもペアで1020gあるのだ。板も軽いのを選んでMovementのRandom。ペアで2,200g。Movementはスイスの会社だが、以前愛用していたTUAスキー(MegaとかExcaliburとか)の流れを汲むというところに惹かれた。軽いのにコシ、キレあり(発泡酒か)。Speedを付けた板を持つと、何かを付け忘れているような軽さ。試用の場所は、おなじみの乗鞍ツアーコースを選んだ。色んな傾斜がミックスした切り開きコースがお試しには手頃だ。週末が冬型の強まる周期になったが、ゲレンデトップからツアーコースを登り出すと、ゲレンデより風もおだやかでまずまず。
 TLTは、靴をビンディングにセットするのに若干コツを必要とする。靴の先端の左右に金属製のくぼみがあり、これをビンディングの左右にある突起に合わせて踏み込むのだが、なかなか位置の見当が合わない。前過ぎたり後過ぎたり斜めだったり。登りの時は、カカトをヒールピースに合わせてからつま先を踏み込むという手もあるが、滑りの時はつま先から踏み込んだ方がスムーズなので、こっちに慣れておいた方が良さそうだ。つま先をセットして足を持ち上げると、、、軽い。板がついている気がしない。板の抵抗をほとんど感じずに足を動かせるのは快感だ。登りだして傾斜が強くなってきても、膝から下を大きく動かして板を振り出せる。たとえて言えば、自転車の軽いギアでクルクル回している感じか。キックターンは、引き抜き式がスムーズに行える。今回はさほど急傾斜はなかったが、傾斜が強まるほど、この利点は効いてきそうだ。
 位ヶ原への急登でスキーアイゼンを使ってみる(装着状態)。テレマークビンディングで使えるかも、ということで数年前に買ったDynafit純正スキーアイゼンが、そのときは結局使わないままだったが、今回よみがえって見事にフィット。長年設計を変えないDynafitは、さぼっていると言われることもあるようだが、こんなときにはありがたい。低い方のクライミングサポートを立てた状態でこの程度爪がでるが、雪が柔らかかったので効果のほどはまだ分からない。位ヶ原の一角にたどりつくと、おきまりの猛烈な北風が吹きつけて来て即決登高終了。滑るときはヒールピースを回して滑降ポジションにしてからガツンと踏み込んで固定する。靴にジャバラはあれども残念ながらテレマークターンはできない。今回はちょっと生コンっぽく固まりかけの雪だったが、特に問題なくアルペンターンで滑れた。というか、簡単に滑れすぎて雪の違いがわかりにくい。このあたりは雪質に左右されにくい山スキーの利点でもあるが、味わいがないなぁと思う。そのときどきの雪質に合わせて滑り方を工夫できる(させられる)のがテレマークのおもしろさだなと改めて認識した。
 翌日はふじぱらに移動してハードバーンでの滑りを試してみた。ふだんテレマークの道具を使っていても、パラレルでのカービングばかりしているので、ほとんど感覚の差はない。少し安心感多め。TLTでは靴底と板のあいだに隙間があり、ジャバラがあって靴底の柔らかいScarpaの靴では、踏み込んだときに靴底がたわんでフワフワした感じになる。山の柔らかい雪では気にならないが、ハードバーンでは特にこれが顕著だ。スキーアイゼンの取り付け部分を利用して、足の母指球部分の下にはめ込んで板と靴の隙間をなくすプレートが靴についてきたので試したところ良好。取り付け方に無駄のない感じが好感を持てる。
 とりあえずは無事に滑り出したTLTライフだが、登りの軽快感に比べて滑りの不自由さ(あくまでもテレに比べてだが)がちょっと残念。ツアーでの滑りの途中で、平坦だったりわずかな登り部分がある場合も、テレの方が楽そうだ。多分、ガンガン登って、ズンズン滑ってくるような長いツアーではTLTがいいんだろうな。平湯温泉からの四ツ岳とか。スキーを新鮮な目で見直す機会として楽しみたい。上天気さんにはTLTのお先達としていろいろアドバイスをいただいた。Many thanks.

(2014.3.19追記) 3年以上たっても良く読んでもらっているので、現時点での追補をしておきます。TLTの特許期間が終わって、同規格のビンディング(テックビンディングと総称)が多数でてきました。DynafitのものはRadicalシリーズとなって、ヒールピースを回さずにクライミングサポート状態にできるようになりましたが、設計の基本は変わってないようです。TLT純正のブーツはジャバラ付きのものはなくなりましたが、NTN(ロッテフェラの新テレマーク規格)用のブーツがジャバラがあってTLTにも使えるので、ここで紹介したF3のような使い方ができます。NTNブーツを使って、TLT互換ビンディングを出しているイタリアのATKが「Newmark」という仕組みを出しました。登りはTLT同様で、滑るときにつま先のTLT金具より少し後ろでコバを両脇から押さえつけて、テレマークができるようにしています(F3はサイドのコバがないので使えない)。一度試乗しましたが、ジャバラを曲げると足の甲が押さえつけられる感触があってやや気になるが、まずまずテレマーク的。F3でもNTNブーツでも使えるマイナーなシステムとしては、TTS (Telemark Tech System)というのもあります(リンク)。登りはTLT、下りはテレのケーブルビンディングの後半部分をかかとに引っかけてテンションを出す。ブンリンさんが試したそうですが、カカトの上がりがかなり重いそうで、Newmarkとは対照的なのかなと想像してます。(その後購入して試したところ、たいへん自然な、ケーブルビンディングに近い感覚で使えました。2021.6.8)これらはかなりキワモノっぽいので、素直にNTNを試してみようかという気もするのですが、NTNのクライミングモードが少し靴の動きに制限があったり、全体に機構として凝りすぎ感があり、重量も重いので、あまり軽快なツアーをメインターゲットとしていないようなので、NTNにも手を出しかねているというところです。先日久しぶりにここで紹介したTLTセットを使いましたが、滑りは不自由だがシステムとしてはスッキリしてるなぁという感を新たにしました。
セイフティーリリースという観点では、TLTやNTNはリリース機能があるけれど、従来の山スキービンディングほど完全なものではなく、TLTではむしろハードな滑りでの誤開放を気にする人もいる。NewmarkやTTSは75mmのテレと同様にリリースなしです。怪我の防止や雪崩での引き込まれ防止という点ではリリースもほんとはほしいところだが、さて、というところです。

2011年1月18日火曜日

諏訪・蓼科あたりのスキー場

 正月明けの連休は、かなり冬型が強まる予報なのと、行こうかなと思っていた白馬あたりは好みの宿がとれなさそうなので、一転して蓼科に宿をとってその周辺の行ったことのないスキー場を渡り歩いた。ほとんど人工雪のゲレンデばかりだが、青空の元で高速カービングという目論見は的中。次週に行ったふじぱらもあわせてインプレッション。
 まずは、車山スキー場。とにかく眺めが良い。リフトトップからちょっと歩いて上がるとレーダードームのある車山山頂。八ヶ岳、富士山、御岳、乗鞍、北アルプスと大パノラマ。山頂からの急斜面も楽しい。今回はビーナスコースがちょうどいい硬さで高度感を楽しみながらカービングできた。レストランが三ヶ所にあってそれほど混まないのがありがたい。施設の更新がよく行われているようで、おしゃれな感じが良い。4時間券が使いやすい。マスターズ、50歳以上。
 翌日は、まずしらかば2in1。広いスキー場ではないし標高差も大きくないが、レイアウトが良い。志賀の熊の湯そっくりの急斜面+緩斜面の地形だが、上部の急斜面部分が広い谷地形になっていて滑りやすい。下の緩斜面もむだに長くない。全体にファミリー・初心者と、上級者との分離がうまくいっていて、安心してスピードを出せる。シニア、55歳以上。


 午後は、2in1と共通リフト券になっている白樺高原国際に移動してみる。ここはスキーオンリーで、りっぱなファミリーゲレンデ。6人乗りゴンドラがかかっているが標高差270mというかわいいもの。リフトの乗り降りが心配な子供たちも安心して乗れる、というスタンスのゴンドラ。ゲレンデもあくまでもフラットな中斜面が主体で、2in1と組み合わせて丁度いい感じ。うまくできている。

 よくばって夕方にもう一つ、白樺湖ロイヤルヒルに行ってみる。車山と白樺湖の景色を楽しもうという観光気分。夕方だったのでリフトベース近くに駐車できたが、本来はビーナスラインから中腹に上がったところの駐車場を使うのが良いらしい。思ったより広いゲレンデで、高校のスキー旅行もいくつか来ていた。目論見どおり景色は上々。しかし夕方のゲレンデはどんどん寒く堅くなり、一回券3枚で満足。シニア、55歳以上。一回券を含む全ての券種にシニア料金が設定されているのは珍しい。
 青空が広がった翌日は、景色を楽しみにピラタスへ向かう。駐車場で既に-10℃、山頂は-14℃とのこと。サングラスでは涙ボロボロで滑れない。リフトは地面ぎりぎりの高さで、よほど雪がふらないところなんだなと納得。整備のゆきとどいたゲレンデだが、リフトで滑る下部エリア全体に傾斜がゆるいのが残念。ゲレンデベースを見下ろすテクニカルバーンが唯一の急斜面で、ここは楽しい。

 ロープウェイは100人乗りで、車内はほとんど電車のようだ。10分置きに出るのでそれほど待たされる感じはない。写真は山頂駅到着直前だが、何かドックのような感じ。北八ツを歩く登山者、ネイチャー系スキーなどいろんな人が乗っている。下りに乗る登山者も多い。標高差は480mなので焼額ぐらい。林間を滑り降りるコースはまずまずの広さと傾斜で楽しい。ロープウェイ山麓駅のレストランが空いていてよかった。シニア、55歳以上。
 今回の蓼科での宿は、ホテルハイジ。表の道から少し入った高台にある、やんごとない雰囲気のホテル。食事や環境からすると、結構バーゲンプライスだと思う。夏の避暑が本番らしく、冬はよく空いている。1−2月に冬休み期間がある。前回は6月に泊まったが、裏山のカッコウの声が高原らしくてよかった。近くのスキー場が結構滑れることがわかったので、また冬にも来たい。

 翌週も強い冬型の予報だったので、晴天率85%に期待して富士見パノラマへ行ってみる。ここのウリは、標高差750mのゴンドラ。これはなかなか滑りでがある。地形図で見てみると、八方が650m、焼額が450m、チャオが380mだから大きさがわかる。栂池は760mあるが横に長い。マイアのトップから斜度が緩むまでが標高差200mぐらいなので、それを4回つないだぐらいに、えんえんと中、急斜面が続く。修行のスキー場だ。今回は10回滑ったので総標高差7500m。すごい。さすがに昼前から吹雪となったが、晴れていれば八ヶ岳の眺めがよさそうだ。シニア、50歳以上。



2011年1月5日水曜日

天元台の年越し

 一昨年の森吉山に続いて東北での年越し。秋田県の北の端だった前回と比べると、天元台は山形県の南端なので、遠いとは言ってもだいぶまし。最寄りの会津若松ICまで岡崎ICから新潟経由で約580kmである。観光を兼ねて、行きと帰りに途中一泊ずつしながら、往復1400kmのドライブとなった。天候が荒れ模様なので、新潟古町を観光(しめ縄がずいぶん横長)したり、秋に行った会津若松に寄ったり(数日前のドカ雪が片付けられておらず市内渋滞にはまったが、雪の鶴ヶ城を望見できた)、米沢の居酒屋で一杯やったり(刺身がみな脂っこくてびっくり)して、麓の白布温泉にたどりついた。今回の宿は、民宿白布屋。正月料金で一泊二食¥7,500というお値打価格。「山小屋を思えば、いいよね」とか「泊まれる焼肉屋」などと表現される。ひとりで切り盛りされている75歳のご主人はタダモノではない。
 天元台スキー場は景色の良いところで、米沢の街やその向こうに朝日岳や月山が時折望まれた。しかし寒い。リフトがフードなしで、昔ながらのゆっくり動くペアリフトなので、ますます寒さが身に染みる。2日半にわたってゲレパフを楽しんだ。ゲレンデトップから中大巓に向けてツアーのようなものも少々。これだけ寒いと歩いている方があったまっていい。ゲレンデの休憩所にはこんな薪暖炉もあった(photo by K.Hoshi)。あまり暖かくないが、いい雰囲気。ロープウェイで上がった分を滑り降りる湯の平コースもレースっぽく楽しめた。帰り道は、いつもの妙高で一泊してぽん太郎で一献。妙高は降り過ぎなので、帰路菅平に寄り道してハードバーンを楽しんだ。大雪の予報の年末年始だったが、通ったところはドカ雪にはならず、時には青空ものぞくまずまずの天気となり、寒い寒い年越しスキーを楽しむことができた。itokisyaブログ。まっちゃんブログ