2011年2月28日月曜日

入笠山(とtarga ascent)

 今季初めて行くようになった富士見パノラマ(通称ふじぱら)だが、今まであまり良い天気に出くわしたことがなかった。今回は「これぞふじぱら」と言わんばかりの好天に恵まれたので、このチャンスを活かして有名な入笠山の大パノラマを味わおうと、しばしスキー場を後にした。ゴンドラ駅から板をかついで夏の遊歩道を少し登り、スキーをはいて樹林帯を下ると入笠湿原(今は雪の原)。ここでシールを貼ってしばらく林道を歩くと写真の「お花畑」(今は白い坂)に出る。ここは昔のスキー場と書いてあるページもあった。入笠湿原とお花畑をシカから保護するためにネットで囲ってあるのだが(地図)、これがスキーで歩いていると時々邪魔になる。
 上の坂を登って樹林帯(一部急斜面)をジグザグ登ると入笠山山頂。見事な展望だ。左は諏訪湖越しに、後立山連峰。左端に剱岳も見える。ただこの剱岳、双眼鏡で見ると双耳峰に見えて、変だなぁと思ったが、帰ってカシミールでチェックすると、針ノ木岳と重なって見えているのだった。面白い。当然、その左には槍穂、乗鞍、御岳が控えている。
 反対側には北八ツから南八ツの大パノラマ。手前の左の山の建物がゴンドラの山頂駅だ。ここまでは1時間半ほどの行程。山頂は結構賑わっている。ほとんどがスノーシューの人たちでスキーは他にいたかな?「ここでスキーするんですか」と不思議がられたぐらい。確かに樹林あり、時に急斜面ありで、特にこの日はバリバリの悪雪で、スキーに向いたところとは言い難かったが、入笠山に行く人とゲレンデで遊んでいる人が、全く別々という現状も変と言えば変。あと多かったのが犬を連れた人たち。犬を乗せられるゴンドラがそう多くないのかな。防寒スーツを着せた大型の犬たちに雪原を走らせていた。
 今回は、初めてツアーモード付きビンディングのG3 targa ascentを使ってみた。ちょっと重いのがつらいが、ツアーモードでのシール登高は、TLTでの登りに近い感じで足を動かせる。本来カカトが自由に上がるはずのテレマークビンディングに、より複雑な機構を導入することに心理的抵抗があって使わずに来たが、TLTで味わったもっと自由な足の動きと、テレマークでの滑りを両立させるにはやむを得ないかというところ。geckoのシールという、糊を使わずにシリコン樹脂の粘着力で貼り付けるという新製品もあわせて使ってみたが、今のところ効能書き通りに扱いやすい。汚れたらジャブジャブ洗えばいいそうだが、それでリカバーできなくなったら、今までのシールみたいに糊を塗り替えることは出来なさそうなので、そこが弱点なのかなと今の段階では予想している。でも最近は板ごとに形が違っているので、板に合わせてシールも新調することが多いので、それほど長く使えなくてもいいのかなとも。

2011年2月17日木曜日

白馬 off and on piste

 岩岳民宿ごお津をベースにツアーとゲレンデを楽しんだ。メンバーは5名。板の太さ長さ種類いろいろだが足前の揃ったいいパーティーだった。リーダーは真ん中の板をあやつるちんふる氏。白馬エリアのすみずみまで知っている練達の士。いつもタッグを組んでいるシェム氏が負傷のためヒマしているのが僕らには幸いした。自分にとってはTLTでのツアー3回目となり、今回はパウダーでの滑りを味わうことができた。深いパウダーの急斜面でも安心して突っ込めるのは良かったが、谷筋の微妙な起伏のある地形では、登り返しのないラインを探しながら滑るために開放感がないのはこれまでと同じ感想。

 栂池のリフトトップから林道を歩き出す。早稲田小屋を過ぎた写真の地点から右の斜面を登って稜線に出る。ここから尾根の反対側に滑り込むのは、前回のコース取りだが、今日はdeep and steepを求めて、稜線を登り続けて天狗原の一角に登り着いたところから滑ることにする。結果は大正解で、湿り気が昇華したのか昨日ちんふる氏が試したときよりさらにドライになっているとのこと。登りながら感じたのだが、TLT+ジャバラだとちょっとした登りはクライミングサポートを使わなくても登れる。靴底が曲がるために、カカトまで板につけなくても、あしうらの前半分に荷重することで登れるのだ。テレマークの道具でも、少なくともT2やT3といった柔らかい靴の場合は、同じように登れるので、これまでクライミングサポートをあまり使わないで来たのだが、TLT+ジャバラでも似たような登り方ができるのはうれしい発見だった。同じTLTでも靴底の硬いブーツではこうは行かないのだろう。
 谷底までパウダーを楽しんでから、シールをつけて登り返し、白馬乗鞍スキー場の上の稜線をたどる。意外に晴れ間ものぞいてきた。ここからスキー場に向けて谷筋を急降下するのだが、さきほどとは違ってかなり重めの「パウダー」。斜面の向きで微妙に雪質が変わる。会心の滑り一本アリ。朝、回送しておいた車で宿に戻り、夕食までのひとときを「せんじゅラッピー&アップルランド」で過ごした(メンバーの3/5は風呂&ビールだったようだが)。ラッピーが輸入代理店になっているSKILOGIKの板が面白そうだ。種類とデザインが一定の組み合わせになっていないのは手作りの良さか。ラッピーに入るまではうらうらと日の照る天気だったが、出てくると猛吹雪になっていて驚いた。夕方から冬型とは聞いていたがものすごくデジタルな切り替わり。
 翌日は、白馬コルチナでいわゆる「サイドカントリー」の予定だったが、残念ながら雪が降りすぎて上のリフトが動かなかったため、ゲレンデ脇の非圧雪部分を拾って楽しんだ。やっぱり滑ることに関してはヒールフリーが楽しい。一般のリゾートスキーヤーが普通の選択肢としてヒールフリーの道具を選び、そこから好みによってバックカントリースキーやクロスカントリースキーに進んでいく人もあり、カカト固定道具を使ってレースやモーグル、フリースタイルのように極限に挑む人もあり、ゲレンデでリフトを使ってヒールフリースキーを楽しみ続ける人もあり、というような流れができないものだろうかといつも思う。ヒールフリーの道具は、テレマークターンだけのための特殊な道具ではなく、これが歴史的に見てもスキーの基本形なのだから。
同行のitokisyaのブログYouTube
(2nd and 4th photos by K.Hoshi)

2011年2月9日水曜日

TLTで滝沢尾根

 TLT体験の2回目は妙高アカカンゲレンデトップから前山に登って滝沢尾根を降りるコース。前日から晴れているので登りのトラックは道路のように堅くしまっていて、急なところもあるが、クライミングサポート1段+スキーアイゼンで楽々。写真後方に見える「三角ハゲ」は傾斜が立っているので、引き抜き式キックターンを練習する。前半の開きだしは問題ないが、後半で回す板のトップが雪面にひっかかって困ったが、靴のカフにトップを乗せるようにするとうまくいくようになった(岳人2月号が参考書)。テレではどうだろうか。
 稜線に上がると、左手に滝沢尾根の上部が見える。写真のように見晴らしが良い。写真の更に右側、山頂との間の部分はやせ尾根なので状況によってはちょっとこわいところだ。DynafitのTLT5という最新式軽量靴を履いた人がいた。「道具は一式新品だけど、身体の方は83年使ってるよ」と笑いながら、無事登頂されていた。あやかりたいものだ。滝沢尾根上部は、右側(南側)はガリガリだったが、左側は快適なパウダー。
 写真は上の写真と同じあたりを上から見たところ。この辺をすぎて樹林に入ると、しだいに重い雪になっていった。樹林の中を滑る場合、テレでは前足を木の間に滑り込ませるようなイメージで僕は滑るのだが(歩くような動作)、アルペンではそうはいかないので、一瞬混乱した。少し手前から、木の間を通る軌跡を思い描いて、うまく板を向けてやるときれいにターンできるようになった。違う道具を使うとそれまで無意識にしていた動作について考えさせられて面白い。また、カカトが固定された道具では、逆にカカトが浮かないような身体の動きにしないといけないようだ。これはちょっと意外だった。斜度の変わり目など、急ブレーキがかかる状況では、テレではテレマーク姿勢でショックを吸収するという手があるが、アルペンではカカトが浮かないためにひどいと全身が飛んでしまう。テレはその場その場で対応できる(しなければならない)が、アルペンでは早め早めに計画的に滑らないといけないような感じ。雪が重くなってくるほどに、カカトを中心にして雪面をえぐるようなターンを心がけると、たいへん安定して滑ることができた。むしろ安定しすぎているほど。トータルでは体力的にテレよりだいぶ楽だなぁと感じた。細かいバランス調整が必要でない分、筋肉疲労が少ないのだろう。
山スキーの人の登りでの動きを見ていると、急斜面でのキックターンなどトリッキーな場面でギクシャクしてしまう人がしばしば見られるが、足の裏が曲がらないために後ろの足がつま先立ちになり、板のコントロールを難しくしているように見える。これに対して、F3ではジャバラのおかげで母指球をあまり板から離さない姿勢がとれるため、テレとほとんど感覚的に違いのない動作ができる。自分でも意外なぐらい違和感なくTLTを使い始めることができたのは、ジャバラ靴と組み合わせことが大きな要素になっているようだ。