2011年8月30日火曜日

瑞光レンズ

 一年前に買ったNEX-5で、いろいろマウントアダプタ遊びをしてきたが、受光素子がAPS-Cサイズなため、35mm版一眼レフカメラ用のレンズを使うと、フィルム撮影時に比べて中央の一部しか使っていないので「もったいない」感が伴う。というか、レンズが「無駄に大きい」感かな。それに対してハーフサイズカメラのレンズだと、フィルム面サイズがAPS-Cとほぼ同じなので、レンズのイメージサークルをフルに活かした撮影ができる。レンズも小振りだし、ハーフサイズで適当な画角になるように焦点距離も短めなのでまさにNEXにベストフィット。OlympusのPen-Fというハーフサイズの一眼レフカメラの交換レンズの中で、「G. Zuiko Auto-W 25mm f2.8」というのが写真のレンズだ。NEXでは37mm相当の画角となって、使いやすい。一眼レフ用レンズなので最短撮影距離25cmなのも便利(レンジファインダーカメラ用レンズだとふつう80cmぐらいまでしか寄れない)。ウィーンから通販で買った逆輸入品で、鏡胴には「PASSED」と書いた古い金色のシールが貼ってある。これは新品の輸出時に日本の検査組織が貼ったものだ。外国で大事にされていたことがわかる。「Zuiko」は漢字で書くと「瑞光」で、高千穂光学(オリンパスの旧称)らしい神がかったネーミングもいい。最近、NEXシリーズの新製品がボディー、レンズともたくさん発表されて勢いづいているが、micro-4/3陣営との差別化のためか、こういう小振りなレンズという路線には進まないようなのがちょっと残念だ。

2011年8月26日金曜日

リンプン

 チョウやガのハネの表面は鱗粉(りんぷん)という「粉」で覆われていて、つまむと指先にべっとりと着いたりあたりに飛び散ったりして、これのせいでチョウやガがきらいという人も多いでしょう。写真はその鱗粉の一枚を拡大したところ。走査型電子顕微鏡という機械を使って撮影したものです(倍率は1190倍、右下の点線の全長(1の上からuの上まで)が25.2μm、つまり約40分の1ミリ)。モンシロチョウのハネの表面を粘着テープでチョンチョンとなぜて、あらかたの鱗粉を取り除いて一枚だけ残ったところです(別に狙ってしたわけではありません、偶然の産物です)。この鱗粉は元々一個の細胞が平たくなったもの。左下に鱗粉が刺さっている「ソケット」と呼ばれる構造も見えますが、これも一個の細胞が変形したもの。鱗粉の表面はこのように非常に細かい凹凸になっているので、光を反射しないとか、水をはじくといった性質を持っています。

2011年8月16日火曜日

夏の乗鞍

 お盆休みの週末、有名どころの山小屋はさぞ混み合っていることだろうと、絶対空いていると思われる「バスの通過する山小屋」位ヶ原山荘泊まりで夏の乗鞍岳を味わってみた。雪のある時のスキー山行では数知れず登っている乗鞍だが、夏に登山に来るのは初めて。初日は高速の渋滞で到着が遅くなり、冬には味わえない人であふれた乗鞍高原を味わってから(ルコパンはいっぱいだったので、ゆけむり館前の久保さんのシュタンベルグの出店でソーセージと石窯パンを味わった)、バスで位ヶ原山荘に上がった。肩の小屋入り口まで散策。自転車が行き来するバス道路を1度横切る以外は高山植物が意外に豊富な静かな山道だ。予想通り泊まり客は僕たちだけ。この季節の位ヶ原山荘は自転車の人たちのためのエイドステーションが本業みたいだ。2月からの営業が始まり、スキーツアーで何度もお世話になっておなじみの小屋になった。下界の猛暑で疲れ気味だったが、久々に布団を掛けてゆっくり寝た。
 翌朝は頼んでおいたおにぎりを食べて5時に歩き出す。位ヶ原への登りで振り返ると、槍・穂高が浮かび上がっている。いつみても美しいシルエット。足下はけっこう岩がゴロゴロしていて歩きにくい。朝露でかなりビショビショになる。肩の小屋入り口では、スキーの人たちが既にバスでやってきて準備をしている。山全体からすると、小さな雪渓だが、歩いて登って滑るには適当なサイズかもしれない。ポールをたてていろんな回転半径で滑るコースがあちこちに見える。肩の小屋まで来ると、いよいよメインストリート。小屋泊まりの人たちが既にご来光登山から帰ってきているのとすれ違いながら登る。
 山頂からは南アルプス方面がよく見える。先週登った塩見岳は見えているのだろうが、見慣れないのでよく分からない。御岳は半分雲に隠れていてやや迫力ないのが残念。帰ってからカシミールで検討したところ、南アルプスは白根三山、塩見、荒川、赤石、聖岳まで見えていたことがわかった。さらに面白かったのは、富士山が北岳と重なって見えていたこと。

 富士山最高点の剣が峰(左図では「富士山」と書いてある)と、日本第2の標高を持つ北岳がきっちり重なっているのが偶然とはいえ面白い。富士山の第2のピーク白山岳が北岳の左にのぞいている。
 山頂から更に南西方向の道を歩いてみる。千町が原に続く道だ。山頂の雑踏から一気に人気のない山道になる。大日岳とのコル周辺にはコマクサがたくさん咲いていた。道はゴロゴロした岩を飛んでペンキマークを探しながら続く。人通りが少ないので安定した岩を見極めるのがなかなか難しい。ハイマツが覆い被さったところも多々。ウェアに松ヤニがこびりつく。奥千町避難小屋までと思ったが、意外に時間をくったので畳石原(阿多野への分岐点)で引き返すことにする。広々として気持ちのいいところ。奥千町避難小屋も双眼鏡でよく見える。
 ゴロゴロ道は上る方が楽だ。ふたたび雑踏の山頂から、畳平から往復の人たちで混み合う道をかき分けながら肩の小屋まで降りる。吹き抜けのある面白い構造。建て増し棟もあり快適そうな小屋だ。雪渓でのスキーヤーはずいぶんたくさん。自転車やスキーやハイキングなど、多くの人がてんでにいろんなことをして楽しんでいる様子がなかなか良い。位ヶ原山荘でうどんを食べてから、車を停めた三本滝バス停まで最後の仕上げに歩いて降りたが、なかなかつらかった。山頂からは1200mあまりの標高差。滝を見てからバス停までのちょっとした登りがこたえた。

2011年8月11日木曜日

三伏峠・塩見岳

 三伏峠小屋に2泊して塩見岳に登った。連日、早朝は良い天気だが8時頃には雲が多くなり、午後には雷や雨というパターンが続いたが、昼過ぎには小屋入りもしくは下山というスピード行動のおかげで快適な山歩きができた。
 鳥倉林道から三伏峠へは、南アルプスとしては良いアプローチ。夏は登山口まで一日2便のバスが走っており、自家用車ではゲートにはばまれて走れない最後の数キロも運んでくれるので、なかなか便利そう。林道はほとんどのところで普通車すれ違いができる程度の道幅があり路面もきれいだが、落石が多く注意を要する。三伏峠小屋は、ちょっとぶっきらぼうな第一印象だったが、だんだん味わいが出てきた。巧言令色の割に実がないという昨今のトレンドの逆。消灯は7時半で、厳密に運用されている。
 朝食は4時半から。前日は午後ずっと雨だったが、朝は雲も多いがまずまずの天候。富士山が見えて南アルプス気分が出る。本谷山からは北アルプス方面の展望が開ける(写真)。槍穂から白馬三山まで見えたのは予想外だった。中央アルプスもよく見える。本谷山からは湿った樹林の中のトラバースが続き、全然アルプスという感じはない。最後に急登を経て塩見小屋に出る。ここまでは辛うじて展望が効いていたが、わき出した雲につかまってしまう。

 塩見小屋は狭いので有名だが、若い小屋番さんが熱心に世話している印象。仮設の別棟もあった。地質的には、小屋の少し上から山頂にかけて緑色岩地帯だそうで、急にもりあがった塩見岳の形は、この硬い岩盤によっているのだなと納得。天狗岩をまきながらかなり傾斜のきつい岩の崖をよじのぼると、最後は高山植物の点在する土の斜面をへて西峰に登り着く。すぐその先が東峰(写真は東峰から振り返った西峰)。熊の平を経て間ノ岳に続く稜線や、蝙蝠岳方面は雲の晴れ間に望まれたが、富士山は見えず。塩見小屋で珈琲を飲んでから帰路につく。本谷山への道は遠かった。12時に小屋に帰りついてのんびりしていると、雷が鳴り出し近くにも落雷したようだった。夕方には驟雨。三伏峠小屋は結構広く別棟もあるので、土曜の夜だがゆったり寝られてありがたかった。北アルプスとはやはり人の数が違う。

 翌朝はまた展望の効く天気となり、朝焼け雲のかかる塩見岳を見ながら、小河内岳までの往復に出発。お花畑を抜けて稜線に出ると、伊那谷側の浸食の激しさに驚かされる。写真は烏帽子岳付近から振り返ったところだが、ガケの右の樹林の中に見えるのが三伏峠小屋。烏帽子岳から小河内岳に続く稜線は、昨日の樹林に沈潜するような道とガラッと変わってアルプスの雰囲気になる。塩見岳往復だけで帰ってしまうのはもったいない。

 近くに塩見岳、遠くに富士山を眺めながら稜線の道を辿り、小河内岳に着く。ここの避難小屋は素晴らしい場所にある。南に荒川岳、赤石岳を望み、正面は富士山。このあたりの稜線の避難小屋は、夏の間は管理人がいて、寝袋を貸してくれたり、簡単な食事も出るそうなので、軽い荷物での縦走もできそうだ。静岡側からは登山口まで時間がかかるし、標高差も2000m級なので、どうも縁遠い感じだったが、このあたりなら2,3泊でいろいろ工夫できそうだ。「南アルプスで一番人の少ない稜線」とのこと。
 三伏峠から往路を鳥倉に戻る。樹林の道はどこをとってもコケがきれいだった。アプローチが近いといっても標高差600mぐらいあるので、疲れた足には結構遠く感じた。登山口に地質の説明板がある。プレートの動きにともなう、「はぎ取り付加」という概念は知らなかったので面白かった。右下図では伊豆半島とその付け根の一帯が他より新しい付加体になっているが、この部分の自然放射線量の低さはこのあたりに関係があるのだろう。水場の位置が断層破砕帯というのもなるほど。先日行った山陰では「山陰海岸ジオパーク」と称してあちこちの博物館で地学的な説明が詳しくされていたが、地学も昔高校で習ったころと、概念が全く変わっているようなので、一度まとめて勉強すると面白そうだと思った。