2012年8月14日火曜日

五色ヶ原、越中沢岳

 お盆直前の金土日で、立山、五色ヶ原方面を歩いてみた。山スキー愛好家にとっては立山から槍ヶ岳を目指す「日本のオートルート」の出だしの部分としてなじみ深い。この季節は五色ヶ原のお花畑も楽しみだ。前夜に麓のホテルに泊まって、朝ホテル前から室堂行きの直行バスが出るという極楽プラン。いつものアルペンルートのバスの録音ガイドと違ってガイドさんがひたすらしゃべり倒してくれるのでいろいろ新しいことも知った。立山町とネパールのクムジュン村は姉妹関係なので中学生の交換訪問をしてるとか。いいなぁ。舗装路のような道を人混みをかきわけて一ノ越まであがる。JunRinaのJunさんが大部隊を率いて雄山に上がっていった。
 龍王に向かって稜線を登り出すと、人の数はがたっと減る。富山大の施設で五色ヶ原方面に向かうとさらにがた減り。写真は鬼岳の東面をトラバースするところ。雪がまだ多い。
 獅子岳は雷鳥が多いと言われているので期待して歩いていたら、道の真ん中で母子が砂浴びをしていた。延々とやっているのを待ってもうそろそろと歩きかかると、脇のお花畑に避けてくれたところを撮影。たっぷり砂が入っているので、身震いをするとパッと砂埃が立つのが面白い。春スキーの時期には雌雄ペアでうろついていて、雄どうしがグェェェェと縄張り宣言をしあう姿ばかりが見られるが、この季節は母子連ればかり。雄はどこかで遊んでるのか。獅子岳のザラザラ滑りやすい急坂を下りてザラ峠から少しの登りで初めての五色ヶ原。ハクサンイチゲやチングルマといった雪田が融けたあとに咲く花々が一面に咲いている。
 翌日はガスに覆われた中を鳶山に登り越中沢岳を目指す。このあたりの山は、獅子岳、鳶山、越中沢岳いずれも北はゆるやか南は急坂になっている。鳶山を過ぎたところでガスが切れて薬師岳が姿を現した。一日ピーカンもいいが、こういうのはドラマチックで良い。越中沢岳は樹木のない広い尾根を登っていくところがなんとも気分がいい山だった。
 帰りは少し降られたが夕方はまた視界が回復。夕方キャンプ場を見に小屋から少し下って見たのがこの光景。ここから見ると向かいの後立山連峰の針ノ木岳(左の鋭峰)の右に小さな鋭峰がきれいに見える。蓮華岳の南にある北葛岳だ。船窪、針ノ木間の縦走路はここを通っている。アップダウンの激しい道だが一度歩いてみたい。初日は六畳間貸し切りだったが、2泊目も六畳間に4人とお盆休みにしてはありがたい空き具合。天気予報がわるいのが幸いしたようだ。山小屋には珍しく風呂があるのはありがたいが、「つかるだけで汲み出しはなるべく控えて下さい」なので、これならシャワーだけの方がありがたいかも。いつも男子が先なのも不公平感あり。食事は、最近の山小屋としては質素だが、できあいではなく手作りのおかずが小皿に並ぶ「お膳」風。晩酌をしてるとご飯のおかずがなくなるので、最初からモリモリご飯を食べてカロリー補給をするのが吉。
 予報がはずれて翌朝は快晴。10時ぐらいまでは遠くの山々まで良く見えた。往復コースといえども、天気、時間帯、顔の向きが違うので帰り道の景色も新鮮だ。写真手前が獅子岳、左にガスをまとった鬼岳、ガスの上は左が龍王岳、右が雄山。
 朝露をおびたチングルマはいつ見ても美しい。
 獅子岳から振り返ったところ。右から鷲岳、鳶山、越中沢岳。奥が薬師岳とその左に黒部五郎岳。先週歩いた八ヶ岳は双眼鏡でうっすら認められたが、富士山は雲の中。笠岳の左に顔を覗かせているのは乗鞍かと思ったが、帰ってカシミールで確認すると御嶽だった。富山大施設前の人通りの多いハイマツの中に雷鳥がゴソゴソしている。よく見ると周りで5羽の雛があっちこっちウロウロ。晴れた日に大胆なと思ったがこういう日はかえって人の多いところの方が安全なのかもしれない。岩ゴロゴロの浄土西面を下りて室堂に戻り、空いたバス・ケーブルで麓のホテルに戻って至福の温泉を味わった。

2012年8月7日火曜日

41年ぶりの北八ツ

初めて長野県の山に登ったのは(生まれ育った大阪以外の山に初めて登ったのは)、高校1年の夏に社会科の鈴木嘉幸先生(キンギョ)が希望者を募って連れて行ってくれた山行ツアーだった。登った山は、戸隠山、飯縄山、そして北八ヶ岳縦走。最初は日帰りで軽い荷物で足慣らしをして、最後は重いザックをかついで景色の良い縦走という企画だったのだなと思う。今回は41年ぶりにその北八ツ縦走を再現してみた(飯縄山はこの春にスキーで再訪することができた)。鈴木先生(1982年に40代の若さで病没された)は、「宿には風呂がついてなければならない」というポリシーの持ち主だったので、渋御殿湯に泊まって、黒百合平に上がり、天狗岳、根石岳と縦走して夏沢峠で荷物を置いて硫黄岳を往復し、本沢温泉に降りて宿泊というプランだった。残念ながらそのときはずっと曇り・小雨で展望もほとんどなかったが、今回は晴天に恵まれて、先生はこの景色を見せたかったのかと、遅ればせながら堪能することができた。

渋ノ湯から黒百合平までの道はずっと樹林の中。黒百合ヒュッテで一休みして岩だらけの「天狗の奥庭」コースをたどるとだんだん景色が開けて来て、ついに西方面の大パノラマが広がる。写真の右は槍・穂高。真ん中が乗鞍、左の台形が御嶽だ。こんな景色を見ていたら次々といろんなところに行きたくなっただろうな(見なくても結局行きまくってるわけだが)。
天狗の奥庭から南の行く手を見れば、東天狗(左)、西天狗(右)がそびえている。あまり岩ゴロゴロを歩いた覚えもないし、天気が悪かったから前回は中山峠から縦走路を東天狗に向かったのだろう。あの時は稜線で雨風が強くなり十数名のパーティーがばらけてしまって、「東天狗で一旦集まって西天狗往復をしようと思ってたのに」と、2年生の先輩が叱られていたのを覚えている。今回は良い天気なので気持ちよく西天狗往復。
東天狗から南下すると根石岳(ちょっとした岩のでっぱり程度)。写真は根石岳の南の鞍部で、右に根石岳山荘がある。なぜかこの「白い平坦な場所の向こうが緑の樹林でちょっと登りになっている」光景が記憶に残っていたのだが、ここだったのかと納得した。あたりはコマクサの復元地になっていてたくさんのコマクサが咲いていた。
静かな樹林をしばらく下ると夏沢峠。まだ12時頃なので、ちょっと300mの登りはエライが、前回同様に硫黄岳往復をすることにする。硫黄岳は火山地形が面白い。写真は山頂付近にいる人たちを、少し東に離れたところから見たところ。溶岩に分厚く覆われた様子と、その上を楽しげに行き来する人たちのコントラストが面白い。地球の断面図イラストみたいだ。硫黄岳からは横岳、赤岳、阿弥陀岳など南八ツの眺めがすばらしい。ちょっと疲れて硫黄岳山荘あたりまで行かなかったのでコマクサの群落を見逃してしまった。前回は結構感動した覚えあり。
峠にもどって山びこ荘でコーヒーブレイク。窓辺の餌台に、のどのサーモンピンクが美しい「ウソ」がたくさん来ていた。近くで見ると背中のグレイとの取り合わせが大変きれいな鳥だ。本沢温泉のちょっと上から硫黄岳を見上げたのが左の写真。からまつが美しい。このあたりに野天風呂があるそうだが今回はパス。おかしいことに、前回は硫黄岳以降の記憶が全くない。よほど疲れて宿までたどり着いたのだろう。本沢温泉は山小屋っぽいけど旅館なので個室もたくさんあり、くつろぐことができた。白馬鑓温泉より高いところにあるというのはちょっと驚いた。
翌日は、主に東側を歩いて渋ノ湯に戻った。山を越えて温泉に泊まってまた山越えで帰ってくるあたり、一昨年のトランス御岳にちょっと似たコースプラン。まず樹林の中をみどり池に向かう。写真のように湖面に映る東天狗が美しい。湖畔のしらびそ小屋でモーニングコーヒーと思ったが、食事の準備中で断られて残念。中山峠へ上る道はだんだん急になり最後は結構息が切れた。また樹林の中の道をたどって小さな岩峰「ニュウ」へ。ここからは富士山が見えると聞いていたが、辛うじて雲の上にてっぺんだけが見えた。白駒池経由で高見石に登りあたりの景色に別れを告げる。
最終ピッチは高見石から谷沿いに渋ノ湯へ。出だしは苔むした樹林の中。雰囲気は良いのだが、通る人が少ないのか倒木が道をふさいだままになっていたり、やや荒れた印象だ。渋御殿湯が駐車場代一日千円取ったり何かと登山者に冷淡なのに対して、他に便利な登山口が増えたりして、ここを歩く人はかなり減っているようだ。「渋ノ湯」から上がって来たといってもそれがどこか知らない人も多くなった。このコースのハイライトは写真の「賽の河原」だ。延々と続く大岩を飛んで行く。日射しがないときでも、結構足にこたえるのに、この日は格別にきびしい日射しがふりそそいでいたのでかなり参った。ようやくたどり着いた渋御殿湯では、立ち寄り入浴は3時までと断られたので(つくづく愛想のない宿だ)、ちょっと下の辰野館で温泉三昧(ここは4時まで。ただし一人¥1,500ナリ)。18℃の源泉は最初震え上がったがだんだん快感になった。 41年前は、姉に借りたコンパクトカメラ(ミノルタHI-MATIC C)に20枚撮りのカラーネガを一本入れて行って、全部は撮りきらずに帰ってきた(つつましい)。この後ワンダーフォーゲル部に入ってからは、主に大阪周辺の日帰りだが色んな山に行くようになり、記録ノートも書くようになったが、この山行については何も書いていないので、このカビだらけのネガ一本だけが記録として残っている。
(後日、鈴木先生の手書きのチラシが見つかったので貼っておく。最後の宿は本沢温泉ではなくて稲子湯だったらしい。行ったら何か思い出すかな。pdf