2013年12月6日金曜日

嵐のち快晴の立山スキー

いつもなら23日前後の日程なのだが、23日夜の雷鳥荘の予約が取れなかったため、翌週の金土プランとした。アルペンルートの営業が土曜で終わるので2日しかないし、吹雪で2日とも行動できないリスクもあったが、ものは試しということで決行。少し足取りが重かったのは、23日の大走り谷での雪崩遭難のせいだ。のんきに板をかついで扇沢に行ったら大顰蹙かとも思ったが、さすがに金曜のせいもあって人影は少ないものの、同病の士もソコソコいた。8時前でこんな状態(8時半始発)。モニタに映る室堂はホワイトアウト状態で気温-13.4℃というのは予想どおりと言っておこう。室堂に着くと早速全員を集めて山岳警備隊からレクチャーがあり、状況も不安定なので滑降は室堂山周辺に留めてほしいということだった。この日は行動できる天候ではなかったので早速チェックインしてのんびりと過ごす。4時頃に一度出てみたが暴風で歩くのも難しかったので、早々に引き上げてKindle Paperwhiteで読書三昧。
翌朝はほぼ無風快晴。ここまで回復するとは期待していなかった。屋上から出ると山岳警備隊さんが待ち構えていて「今日の行動は?」「室堂山周辺にしておきます。」という無難な会話をする。ガイドパーティー2組ぐらいと個人グループ数組なのでのんびりムードだが、行動エリアが限られているので少しあせりもただよう。写真のガイドパーティーは室堂山にあがったところでとりあえずパフパフを楽しむ路線。室堂山は一段上ったあとほぼ平らになってしまうのでこれもうなずける。
天気がいいので向こう側の景色を楽しみにしてダラダラと稜線まで登る。快適なパウダーのシール登高はいつもながら素晴らしい。まだ朝早いので斜光線が雪面に微妙な影を落としている。
稜線からは期待通りの北アルプスの眺望が楽しめた。左手の獅子岳からぐんと下ってザラ峠、そしてまっ平らな五色ヶ原は昨年の夏に歩いたところ。その上の大きな三角は赤牛岳。その左側に槍ヶ岳、右側には雲ノ平の向こうに笠岳がきれいだ。
上のガイドパーティーが最初に滑った斜面。彼らのシュプールの隙間を僕らも滑った。このあたりは非常に軽いパフパフだが、この左手の急斜面はガリガリのところもあったので、前日まではたくさん降ったというよりも主に吹きだまった感じか。
23日に雪崩のあった大走りや雷鳥沢も、また真っ白な新雪に覆われている。室堂山を3回登って今シーズン初めての新雪の感触を堪能した。一ノ越からのシュプールが数本あったぐらいで、全体に自重モードだった。山岳警備隊さんは、結局一日中室堂山方面を見上げて警戒していたようだ。来春からどういう仕組みになるのか。
大観峰からのタンボ平や後立山も大変きれいで、そこそこ来ていた日帰りの観光客も笑顔で楽しんでいた。ロープウェイの上の駅には、荷下ろしを待つ売れ残り商品の山。こんなのは初めて見ると思ったら、そもそも最終日に下りるのは初めてなのだった。少し新鮮な気分。扇沢の駅では、最終日の記念品を「くろにょん」が配っていた。来シーズンもよろしくお願いします、アルペンルートさま。

2013年10月16日水曜日

馬場島から大猫山

体育の日の連休といえば人出が多い。山小屋はたいてい混み合う。どこなら空いてるか脳内サーチをしたところ、答えは「馬場島荘」だった。車で行けるところだから山小屋とはちょっと違うが、雰囲気はしっかり山小屋だ。富山の人は日帰りできるしキャンプ場も併設されてるので、たいてい空いてる。2,3日前に電話したら、案の定いいですよーという返事だった。ここをベースの日帰り登山は、赤谷山、猫又山が有名だが、ブナクラ谷の登りがちょっと大変そうなので、少しは楽そうな大猫山に登ることにした。

登山口への林道は馬場島を出てすぐに車通行止めなので、5時半に馬場島荘から歩いて出発。登山口は、工事で荷物用モノレールを設置したあおりで、出だしに変なトラバースが入ったり、レールが邪魔になったりで歩きにくかった。元からある登山道を妨害しないように工事をしてもらいたいものだ。
出だしからずっと急登が続く。このように太い樹々と岩を伝って、これで熊が出てきたらパンダ山だぁとかぼやきながらガシガシ登る。ときどき太い杉が鎮座している。背後に奥大日岳、大日岳が朝日に赤く染まって見え始める。
二つ目の鞍部(1530m)から見た剱岳。時間がたつにつれ、剱岳に日が当たる角度が変わり、色々の表情を楽しむことができた。ここではまだシルエット。もう少し右には室堂乗越の向こうに浄土山が顔をのぞかせていた。
標高1850mの大猫平辺りでは草紅葉がきれいだった。向こうに見える一段を登ると頂上稜線だ。大猫平は池塘が点在して絵になるところだ。しかし水がたまるということは、道は泥まみれということになる。靴を汚さずに歩くのはなかなか難しい。ゴム長で登る人は事情通、ということになる。

剱岳の西面に日が当たり出して雪渓が見え始める。雲をまとった姿が美しい。
少し登ったところから大猫平を振り返る。草木の様々な色合いの取り合わせが見事だ。ダケカバのアクセントもなかなかのもの。背景の稜線、真ん中あたりが大日岳、左端が奥大日岳。
チングルマの紅葉。渋い色合いのグラデーション。
頂上稜線に登り着き、右手に一登りしたところの小ピークが大猫山らしい(標識を見つけられなかった)。そのままだらだらと稜線をたどって行って、二重稜線っぽくなっている辺りまで行ってみた。白い岩と赤いチングルマが、日本庭園風の取り合わせになっている。
推定山頂のピークに戻って、稜線を振り返る。背景の山は真ん中が猫又山、左端が釜谷山だ。その続きにある毛勝山は釜谷山の陰になってここからは見えない。これらの三つの山が毛勝三山だ。
大猫平から少し下がったあたりから。十分に日が当たり、この日一番の美しい姿となった。山頂はうっすらと雪をまとっている。稜線の左手のU字型のくぼみが「三の窓」だ。裏側にあたる「三の窓雪渓」をスキーで登り詰めてここにたどり着いたことがある。同行のM石さんはここから手前のガケにしか見えないところを滑り降り、見送った僕らは三の窓雪渓滑って戻ったのだった。そういう思い出が景色をいきいきと彩ってくれる。登山口まで降りるころには、かなり足はガタガタだったが、大きな満足感と共に馬場島までの道を戻った。
(後日記録)

2013年10月2日水曜日

伊那谷を見下ろす烏帽子岳

村石さんのブログで、鳩打峠という聞き慣れないところから登りだして、中央アルプスを木曽駒まで縦走したという記録を見て興味をひかれた。調べてみると鳩打峠は伊那の中央道松川ICの近くで、1100mあまり急登して烏帽子岳というのに上がると伊那谷の景色が良さそうなので行ってみることにした(縦走自体も村石さんみたいに一泊二日で、というのはとても無理だけど、もう少し刻むと面白そうなのでいずれまた)。
鳩打峠へは、すれ違いの難しそうな林道だが、峠には未舗装ながらなかなか広い駐車場があって、駐められない心配はない。小八郎岳にはあずま屋や石碑、方向表示板などもあって地元山岳会がキャンプして夜景を楽しんでいる風情。朝はガスの中で眺望ナシだったが、帰りに寄ったら烏帽子岳にさほど劣らない眺望があった。小八郎岳を過ぎると登りがえんえんと続くが、道はしっかりしている。飯島ルートとの分岐点を過ぎるとガレ場の横を通ったりしてちょっとスリリングな道をますます登る。山頂近くで右に分かれると、高度感のある岩場を登って山頂に至る。
山頂から岩場に立つ人を眺めたところ。背景の伊那谷が良い。その向こうは南アルプス連山になる。あまり普段は山登りをやらない風情の地元のニイチャンたちと、隣の駒ヶ根から来た山好きおじさんと、山はいいねぇとのんびりお話しを楽しむ。初めは伊那谷の南の方が見えていたぐらいだったが、のんびりしているうちに北の方が晴れだしてパノラマを楽しめた。中央アルプスはガスが切れず、主脈の南駒ヶ岳あたりが雲の合間にちらっと見えた程度だった。
山頂直下の岩場から見た伊那谷のパノラマ。左の方は八ヶ岳まで見えた。真ん中から右の松川町は果樹栽培が盛んなので緑っぽいが、左の飯島町は稲作メインなので茶色く見えている。南アルプスが雪で真っ白な時にまた登ってみたい。鳩打峠から麓に下りた近くには「清流苑」という温泉があって気持ちよく汗を流せる。ここから見上げる小八郎岳と烏帽子岳がまた絶品。
(後日記録)

2013年9月25日水曜日

蓮華岳から船窪小屋へ

 昨年の秋には種池小屋→新越山荘→針ノ木小屋と周回しようと思ったが、天候不良で新越山荘から引き返した。もう一度行ってみようかとも思ったが、その前からのプランだった針ノ木→船窪縦走を優先することにした。いずれにしても北アルプス縦走では一番混まないエリアだ。こっちは蓮華岳からの下りや、北葛岳の登り降りなど、船窪→烏帽子に似てアップダウンの険しいコースだ。初日は針ノ木雪渓を登って針ノ木小屋まで。スキーでは二度来たことがあるが、峠には登らず、マヤクボ雪渓経由で直接針ノ木岳方面に上がったので、針ノ木雪渓をつめて峠に至るのも、小屋に泊まるのも初めてだ。
扇沢の無料駐車場の手前を左に入る道に誘導され、少し入った道ばたに駐車。この奥は廃業したホテル跡地だそうだ。途中溶け残ったキタナイ雪渓を踏んだりしながら峠に登り、稜線をたどって登り着いた針ノ木岳ではすばらしい展望が広がっていた。居合わせた皆、のんびりしまくりで、なかなかその場を離れる気になれなかった。上は360度パノラマ。両端が峠からの縦走路。真ん中が立山だ。
小屋に戻っても、南側のテラスからは槍方面が良く見える。寒くなるまでベンチに座って景色を堪能した。小屋の混み具合はほどほど。布団一枚に一人寝られたので、9月連休の北アルプスとしては「空いている」というべきだろう。
翌日は、蓮華岳、北葛岳、七倉岳を経て船窪小屋まで。同じ行程を経てそのまま七倉まで下山する人も多かったが、自分たちだとそこまでやると膝を痛めていただろう。左は蓮華岳から北葛岳(真ん中)、七倉岳(右端)を見たところ。北葛との間の鞍部が写真ではなだらかにつながっているように見えるが、実は岩稜がひそんでいる。遠くに槍・穂高。
蓮華・北葛の最低鞍部をちょっと過ぎたところから振り返ったところ。なかなかの岩場だ。下るとスリップのリスクが上がるので、逆行程の方が安心だ。僕らは少し道を間違えて、写真右手の崖に出そうになった。
船窪小屋は2回目。前夜はかなり混んだそうだがこの日はちょうど一杯ぐらい。早く着いたおかげで、夕食は外のテラスでいただくことができた。山を眺めながらゆったりおいしい夕食。これは良いです。
翌日は七倉まで降りるだけ。上の方は少し紅葉が始まっていてきれいだった。写真は振り返り見る北葛岳(右手)と、向こうに蓮華岳。下りの途中の「鼻突き八丁」はなかなかけわしかった。七倉に居合わせたタクシーで扇沢まで戻って終了。タクシー代6,500円で、おつりが500円札で来たのには驚いた。久しぶり。
(後日記録)

2013年9月8日日曜日

雨の御嶽

しばらくぶりのブログエントリーとなってしまった。ちょっと気の付いたことはtwitter、知り合いにお知らせはFacebookという使い分けになったので、ブログの立ち位置がよくわからなくなったためかな。この夏は、家のあたりは記録的猛暑でも中部山岳は風雨が強い日々が続き、山歩きをする気になれなかったが、やっと思い立ってロープウェイから御嶽山剣が峰を往復してきた。上天気で前泊して、7時の始発ロープウェイに一番乗りしたときには、稜線は雲に隠れていたもののロープウェイの上の駅あたりは曇り模様だったが、8合目を過ぎるあたりからぽつぽつ来だして、後はずっと雨の中。こういうこともあろうかと、スノーケリングで愛用の防水カメラ(Canon Powershot D20)をポケットに入れて、曇るレンズカバーガラスをハンカチで拭きつつ、道ばたの草花などを撮ったので貼っておく。

オンタデ タデ科タデ属というからイタドリ(スカンポ)に近い種。赤く見えるのは果実。オンタデは御蓼で、まさにここ木曽御嶽山で発見されたことによる名前だそうだ。ハクサンなんとかは、たくさんあるが、御嶽にちなんだ植物はあまりなさそうなので、おおそうか!とうれしくなった。(で、ブログを書く気になった)
ナナカマド バラ科ナナカマド属 9合目あたりでは、もう実が赤く色づいてきれいだった。秋が深まるにつれて、葉も紅葉していく。
オオヒョウタンボク スイカズラ科スイカズラ属 スイカズラやヒョウタンボクは2個ペアで花が咲き、当然実もペアになる特徴がある。高山でよく見るこれは、ヒョウタンボクだと思っていたら、今図鑑を見直したら、どうもオオヒョウタンボクみたいだ。2個ペアは同じだが葉っぱが大きい。スイカズラやヒョウタンボクは、咲いた当初はまっ白い花がのちに黄色くなり、木全体を見ると白と黄色の花の対比がきれいだが、オオヒョウタンボクでは白いままみたいだ。今度花の咲いているのを見るときに気をつけてみよう。
シナノオトギリ オトギリソウ科オトギリソウ属 平地に生えるオトギリソウはすーっと高く伸びるが、高山に生えるこれは地を低く這う。でもまっすぐなおしべがたくさんある花の形はよく似ている。つぼみの赤と花の黄色の対比がきれいだ。雨の日は、葉や花につく水滴もきれい。
おまけ1 前に舞踊家の武原はんさんの本を読んだときに、戦前に新橋の芸者連で賑やかに御嶽に登った話があり、後に剣が峰直下に句碑を建てた話も何かで読んだので、どこにあるのかなぁと思っていたが、今回見ることができた。剣が峰に登る最後の階段途中の右手。「雷鳥の 樹海はるかに しづみけり」 建てたときには、個人の句碑なんか建ててもらっては困る、などと言われて岩陰にこっそり建てたようなことが書いてあったが、今はVIP扱い。高浜虚子のお弟子さん。
おまけ2 石碑に添えられた牛の置物がいい味をだしていた。牛に引かれて御嶽参り、か。

2013年1月7日月曜日

正月の大阪

正月は大阪のホテルにいたんですが、正月で店が開いてなくても面白いこと、というと散歩とか神さん参りになるわけで、ぶらぶら市内を歩いてみました。元旦は天満天神で初詣をしてから、中之島から三休橋筋という船場の真ん中を南下する通りを歩いてみました。これは西洋建築がいくつもあるので有名らしく、元旦の新聞にも紹介されていたので、良かったのですが、まあ、思った通り。で、二日はまったく行き当たりばったりだったんですが、意外におもしろい 収穫がありました。

ホテルから大阪城を横切って、NHKから左の写真の地図の中央大通と「熊野街道」の交差するところから南下しました。実はこの道が熊野街道とは知らなかったので、途中の道標でそれを知ってまずびっくり。なんでここを選んだかというと、前述の交差点あたりにGoogle mapでは農人町と書いてあって、農人橋といえば、「饅頭こわい」の前半の身投げ話に出て来る地名なのでちょっと惹かれたわけです。それと並んで「お祓い筋」という地名も落語に出て来るのですがこの熊野街道がまさにそのお祓い筋だと知って、うーむこれは面白いところに来た。
で、そのまま南下していくと(上の地図はあとで高津神社の茶店で見たのでそのときは熊野街道の経路を知らなかったので)長堀通との交差点手前には左の写真の榎木大明神。ここはたたりがあるので道路が拡幅できなかったとか。
これを過ぎたあたりで妙に古い家が並び出します。左の写真のあたりですが、大阪のど真ん中にこんなウダツのあがった商家が残ってるなんて。しかも裏通りにはぎっちりと長屋が並んでいます。まるでタイムスリップをしたような、と思っていると通りかかったのが「空堀商店街」。ここはプリンセス・トヨトミという映画の舞台にもなったところで、行ってみたいと思っていたらたまたま通りかかってしまいました。
左の写真のように商店街自体が坂になっている上に、左右はどちらも低くなっていて、長い尾根上にある商店街という変な地形です。このあたりは大阪市内では唯一空襲で焼けなかったところと後で知って、ナルホドと思いました。
その後は、高津神社。これはもう上方落語によく出て来る名所。「崇徳院」の出だしで若旦那が美人と会うところが、左の写真の絵馬堂の茶店だったり、境内にある高倉稲荷は、「稲荷車」に出て来る。
その南の大阪で一番古いという生国魂神社には上方落語発祥の地の碑もありました。雨がポツポツしたのでここで終わりにしましたが、熊野街道の出だしの八軒家から始めて、さらに南下して四天王寺まで行けば充実の落語散歩になりそうです。